大判例

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高知地方裁判所 昭和25年(モ)81号 判決

当裁判所が昭和二十五年(ヨ)第一九五号仮処分申請事件につき昭和二十五年七月二十七日なした仮処分決定を取消す。

申立費用は被申立人の負担とする。

この判決中第一項は仮りにこれを執行することができる。

二、申立の趣旨

申立人(債務者)代理人は主文第一、二項と同旨の判決竝に仮執行の宣言を求める旨申立てた。

三、事  実

申立人代理人は、被申立人(債権者)は高知地方裁判所に対し申立人との間に昭和二十五年五月十日附で締結した新労働協約締結までの暫定協定に基き申立人を債務者として仮処分の申請をし(昭和二十五年(ヨ)第一九五号事件)これに対し同裁判所は同年七月二十七日右暫定協定を有効として申立人は被申立人の同意なくして被申立人組合員を解雇してはならない、申立人は被申立人組合員全員に延滞賃金を完済するまでは被申立人の同意なくして工場を閉鎖し、その業務を停止し、資産を他に譲渡転用し又はその売掛代金債権を他に譲渡してはならない旨の仮処分決定を与えた。しかしながら右暫定協定はその第八項に定められた有効期限である同年八月二十八日の経過により失効した。なお、申立人はこの協定につきその期限の翌日である同月二十九日被申立人に対しそれを失効さす旨の意思表示をもした。しかしてこの失効の事実は民事訴訟法第七百四十七条所定の仮処分取消の事由である事情の変更にあたる。そこで申立人は右仮処分決定の取消を求めるため本件申立てに及んだものであると述べた。(疎明省略)

被申立人が申立人主張の仮処分を申請し、これに対し高知地方裁判所が申立人主張の日、その主張のような理由でその主張するような内容の仮処分決定を与えたこと、申立人主張の暫定協定中にその第八項として協定の有効期限を昭和二十五年八月二十八日とする旨の条項があることは認めるが、申立人主張のその余の事実は全部これを否認する。右暫定協定はその第八項所定の期限を経過してもそれだけで失効するものではない。同項には双方(申立人、被申立人)が誠意を以て右期限前である六月二十八日までに新労働協約を締結するよう努力する旨の但書がついているが現在までまだその新協約は締結されていない。そしてこの但書は、右暫定協定が新労働協約の締結されるまでの間はその期限経過後においてもなおその効力を持続することを趣旨とするものである。もしそうでないとしても右協定の内容は申立人と被申立人間のすでに失効した旧労働協約中のいわゆる規範的部分を引き継いだものであるからその性質上いわゆる余後効により現在なお有効に存続しているものであると述べた。(疎明省略)

四、理  由

被申立人(債権者)が高知地方裁判所に対し申立人(債務者)主張のような仮処分の申請をし(昭和二十五年(ヨ)第一九五号事件)、これに対し同裁判所が昭和二十五年七月二十七日申立人主張の暫定協定を有効としてその主張のような内容の仮処分決定を与えたこと、右協定中第八項として協定の有効期限を昭和二十五年八月二十八日とする旨の条項があることは当事者間に争いがない。

ところで成立に争いのない甲第三号証によれば被申立人主張のように右暫定協定第八項には双方(申立人、被申立人)が誠意を以て右協定の有効期限前の六月二十八日までに新労働協約を締結するよう努力する旨の但書がついていることが認められる。しかし右書証の記載によつて認められる右協定について当事者が定めた有効期間が僅か三個月余の短期のものである事実と証人森本徳雄、植木茂郷の各証言を綜合すれば、他に特約があつたというのならばともかく、右但書だけでそれが被申立人主張のように新協約の締結まではこの協定を有効とする趣旨のものであつたと解することはとうてい困難であるし、さような特約があつたことについてはその主張も疎明もない。又右暫定協定中に仮りに労働条件に関する条項が含まれているとしてもさような条項がその性質上協定の失効後においてもなお有効に存続する(餘後効)との被申立人の主張はこれを採用すべき合理的根拠に乏しい。労働協約は暫定的な平和協定であつて、それに対しかような効力を認めることは有効期間を明らかに定めてそれを締結した当事者の意思に反するのみならず、労働組合法第十六条の規定の解釈上からも協約中の労働条件に関する基準がその協約失効後もなお個々の労働契約の内容に化体して存続すると解すべき余地は見出し難いからである。なお、申立人が右暫定協定につきその有効期限の翌日である八月二十九日被申立人に対しそれを失効さす旨の意思表示をしていることは成立に争いのない甲第二号証の一、二及び証人森本徳雄の証言を綜合して認みられるところである。しからば右暫定協定は現在においては申立人主張のとおりすでに失効したものといわねばならない。そしてこの事実は本件仮処分決定の後に発生したもので民事訴訟法第七百四十七条にいわゆる事情の変更にあたるものである。

そこで申立人の本件申立ては理由があるのでこれを認容することとし、申立費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、仮執行の宣言につき同法第七百五十六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 森本正 安芸修 谷本益繁)

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